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5-1.変形労働時間

1日8時間、1週間に40時間を超えて労働させても割増賃金を支払わなくても良い方法があると聞いたのですが・・?

労働時間は1日8時間、週40時間以下と決められていて、これを超える時間を労働させる場合は、時間外労働となるのが原則です。時間外労働になれば当然時間外手当の問題が生じてきます。

しかし業態によっては、上記法定労働時間が業務にそぐわない場合があります。例えば、1ヶ月のうち前半は忙しいが後半はほとんど仕事がないくらい暇だとか、あるいは1年のうち夏は忙しいけど冬は暇だとか。また、24時間をカバーする交替勤務制のところは、1日の勤務時間が8時間を超えることは必要不可欠な場合もあります。そういう時は変形労働時間制を採用する事で法定労働時間を超えて就業させることができます。これは使用者にとって有利な制度ということができます。

【1ヶ月単位の変形労働時間制】
1ヶ月以内の一定期間を法定労働時間に収めれば、特定の日が法定労働時間を超えても時間外労働にならないとするもの。
《合計で週40時間を超えなければ時間外とならない例》
月曜日:休日
火曜日:7時間労働
水曜日:7時間労働
木曜日:7時間労働
金曜日:休日
土曜日:9時間労働
日曜日:9時間労働
(合計週40時間)

《平均して週40時間を超えなければ時間外とならない例》
第1週目:40時間
第2週目:38時間
第3週目:38時間
第4週目:44時間
(合計160時間、平均すれば週当たり40時間)

1ヶ月単位の変形労働時間制を採用する場合には、労使協定または就業規則等に定めをして、労働基準監督署長に届出をしなければなりません。(労基法第32条の2)

1年単位の変形労働時間制
1ヶ月を超え1年以内の期間を法定労働時間に収めれば、特定の日が法定労働時間を超えても時間外労働にならないとするもの。

1年単位の場合には、1ヶ月単位の変形労働時間制より細かく規定されています。
①1日の上限は10時間まで
②1週の上限は52時間まで
③1週48時間を超える設定は連続3週以内
④対象期間を起算日から3ヶ月ごとに区切った各期間で、週48時間を超える週は3回以内

1年単位の変形労働時間制を採用するに、1ヶ月単位の変形労働時間制を採用する場合に比べやや厳しく、必ず労使協定を締結して、労働基準監督署長に届出をしなければなりません。

【連続労働の限度】
連続して労働させることのできる期間は原則6日です。労使協定で特定期間を設け、その期間では週に1回の休日を与える範囲で例外とすることができます。(例えば1週目の初日と翌週の最終日を休日とするなど)

5-2.休憩の自由利用と外出規制

休憩時間に研修、電話番など休憩時間にもかかわらず拘束される場合があり、かつ割増賃金の対象にもなっていません。違法なのでは?

休憩時間に用事を言いつけられたり電話番をさせたりすると違法となります。またそのような指示は拒否できます。休憩は労働者がその時間を自由に使うことができる時間です。

①休憩は一斉に与えなければならない(労基法第34条2項)
休憩をばらばらにとると、忙しい時は結局電話に出るなど休憩にならないことがあります。そういったことを防止するために、休憩は一斉にとらせることを原則としています。(労使協定の締結を条件として例外があります)
②休憩は労働時間が6時間を越える場合は45分。8時間を越える場合は1時間与えなければならない(労基法第34条1項)
8時間の場合は45分休憩でも違法とならないところに注意。
③休憩時間は自由に利用させなければならない。(労基法第34条3項)
休憩は自由に利用することができますが、労働時間中の休憩であるという性格から、職場を離れる時に上長の承認を得るというのが通例になっています。

手待ち時間
仕事の途中に発生する就労に対する手待ち時間は労働時間としてみなされます。
休憩時間ではありません。

休憩は労働時間の途中にとらせる
休憩を始業前や終業時にとらせてはいけません。あくまでも就労途中にとるのが休憩です。

ポイント
休憩中に研修をさせる場合があります。この場合の研修は任意でなければなりません。
また研修は任意ですから拒否できます。昇給にかかわる研修は任意といえども拒否すると労働者の不利益になるので、任意とすることには問題があります。これを義務とした場合は労働時間とみなされるのですが、企業としてはなるべく人件費をかけないで研修させたいので、こういう場面がこれからは増えてくるでしょう。現状では違法ではありません。

5-3.代休と振替休日の違い

休日の振替と代休とでは、割増賃金の扱いが異なると聞きましたが、具体的に教えてください。

休日の振替とは、就業規則等の根拠に基づき予め振り替える日を特定して休日を他の労働日と入れ替えることであり、この場合、従来の休日は労働日となり、振替えられた労働日は休日となる結果、従来の休日に労働させても休日労働とはならないということになります(割増賃金なし)が、振替えた事により1週間の労働時間が、法定労働時間を上回った場合、その分については割増賃金の支払いが発生します。

これに対して、代休は、こうしたルールに基づく事前の変更の手続をとることなく休日労働が行われた後に、あるいは長時間残業等の代償としてかわりの休日を与えるもので、この場合は行われた労働は休日労働とされるというものです(割増賃金発生)。

ポイント1
結果的には両者とも同じ日数働き、同じ日数の休みがとれているのですが、労働基準法上の効果は明確に区別されます。
ポイント2
事前に振替える日と振替えられる日を特定しておけば、休日労働の割増賃金は発生しないことになります。それとは逆に、例えば、急な作業により翌日の日曜日に休日労働せざるを得なかった場合は休日労働扱いとなり割増賃金が発生します。

5-4.時間外労働・休日労働と36協定

時間外労働させる場合の事前の手続きを教えてください。

労働基準法では原則、1週40時間、1日について8時間を超えて労働させてはならない、また1週1日、4週4日の休日を与えなければならないと定めている。

例外として同法36条の規定により時間外労働・休日労働協定(いわゆる「36協定」)を締結し、労働基準監督署に届け出ることを要件として、法定労働時間を超える時間外労働及び法定休日における休日労働を認めています。

労使は以下の事項について協定しなければならない。

①時間外労働をさせる必要のある具体的事由、業務の種類、労働者の数
②1日について延長することができる時間
③1日を超える一定期間について延長することのできる期間(1日を超える3ヶ月以内の期間と1年間の双方について協定することが必要)
④有効期間(基本的には1年間となる。有効期間の上限はないが、労働組合と労働協約の形で締結する際には、3年となる。)
⑤臨時的に、限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合には特別条項付きの協定を締結

協定は、使用者と労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者と締結する必要がある。

ポイント
労働者には原則、法定労働時間を越えて労働させてはいけませんが、協定書を労働基準監督署に届け出る事によって、時間外労働をさせることが出来るようになります。当然ですが割増賃金が発生します。

5-5.事業場外労働と36協定

1日中外回り等、労働時間の算定が出来ないときはどうすればよいでしょうか?

労働者が事業場外で労働し、労働時間の算定が困難な場合には、所定労働時間労働したものとみなされます。

事業場外労働で所定労働時間を超えて労働することが通常必要となる場合においては、「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」または「労使協定で定めた時間」労働したものとみなされます。

1 事業場外労働のみなし労働時間制とは
営業職のように事業場外で業務に従事している場合は、使用者の直接の指揮監督下にないため労働時間の把握が難しくなります。労働基準法では、このような場合に対処するため、「事業場外労働のみなし労働時間制」を設けています(同法第38条の2)。この制度は、労働者が労働時間の全部又は一部を事業場外で労働した場合において、労働時間を算定することが困難なときは、原則として「所定労働時間労働したものとみなす」というものです。つまり、実際に働いた時間にかかわらず、就業規則等において定められた時間(所定労働時間)を労働時間として算定するというものです。

2 みなし労働時間制の対象
事業場外労働のみなし労働時間制の対象となるのは、
(1)労働者が労働時間の全部又は一部を事業場外で労働した場合で、
(2)使用者の指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときです。

ポイント
事業場外で労働した場合であっても、使用者の具体的な指揮監督が及ぶ場合には、労働時間の算定が可能であり、みなし労働時間制の対象とはなりません。これについて、次のような場合には適用がないとされています(労働省通達昭和63.1.1基発第1号)。
(1) 何人かのグループで事業場外で業務に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
(2) 事業場外で労働する場合、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合
(3) 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおりに労働し、その後事業場にもどる場合

3 所定時間を超えて労働することが通常必要となる場合
業務を遂行するためには、所定労働時間を超えて労働することが通常必要となる場合が考えられます。このような場合には、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなされます(第38条の2第1項ただし書)。

実際の労働時間は、業務の繁閑などにより、多少の差が生じることが考えられますが、この「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」とは、平均的にみれば業務を遂行するのに客観的に必要とされる時間をいいます。例えば、事業場外の業務が8時間で済むこともあれば、10時間要することもあるが、平均的にみれば業務の遂行に必要な時間が9時間であるならば、当該業務の遂行に通常必要とされる時間は9時間となります。

所定労働時間を超えて労働することが通常必要となる場合は、業務の実態を最も熟知している労使間で協議し決定するのが適当であるとの考えから、同条第2項には、当該業務の遂行に通常必要とされる時間について労使協定を締結した場合には、その協定で定めた時間労働したものとみなすとの規定が設けられています。

4 算定した労働時間が法定労働時間を超える場合
みなし労働時間制の適用により算定される労働時間が法定労働時間を超える場合には、時間外労働をすることになりますから、36協定の締結と、割増賃金の支払いが生じます。

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