TOP トップページ > Q&Aこれで解決!労務問題 > 就業規則について 就業規則について 目次 11-1.正社員5人・パートタイマー5人でも就業規則は必要か 11-2.聴取した意見はどこまで規則内容に反映させなければならないか 11-3.就業規則と労働契約・労働協約の関係 11-4.就業規則の不利益変更と既存の労働契約 11-1.正社員5人・パートタイマー5人でも就業規則は必要か 従業員は全部合計すれば10人以上となるが、たとえば正社員が5人であとはパートタイマーやアルバイトといった場合でも、就業規則の作成・届出は必要ですか。 就業規則を作成し届出なければならない使用者は、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」とされています。この場合の10人とは、いわゆる常用雇用の労働者が10人ということではありません。その事業場として常時何人ぐらいの労働者を使用しているかということが判断基準となるのです。この場合の常時というのは、いつでも常にということではなく、いわば平常、通常の状態においてという意味です。したがって、いつもは大体10人以上いるが、時には10人に欠けるという場合は常時10人以上いると判断されますし、逆にいつもは10人もいないが繁忙期には10人くらいになるという場合は常時10人以上の労働者を使用するということにはならないと考えられます。したがって、従業員の雇用形態の差は問題とされません。事業場としていつも何人ぐらいの人を使用しているかが問題です。 設問の事例も、正社員は5人ですがパートやアルバイトを加えるといつも10人以上は使用しているということであれば、就業規則の作成義務があると考えられます。その場合、単に正社員だけについて適用される就業規則を作ればよいということではありません。就業規則の作成義務はその事業場のすべての労働者を対象とした義務ですから、一部の者だけに適用される就業規則があっても、他に適用される就業規則のない労働者がいる場合は、その使用者は就業規則の作成義務を果たしたことにならないのです。設問の場合も、パートタイマーやアルバイトに適用される就業規則がなければなりません。 11-2.聴取した意見はどこまで規則内容に反映させなければならないか 就業規則を変更し届け出るために労働組合に意見書の提出を求めたところ、変更内容について種々意見を書いた意見書が出てきました。こうした場合、述べられた意見を改正内容に反映させないと届出は受理されないのでしょうか。 聴取した意見が反対意見であった場合については、「就業規則は添付した意見書の内容が当該規則に全面的に反対するものであると、特定部分に関して反対するものであるとを問わず、又その反対事由の如何を問わず、その効力発生についての他の要件を具備する限り、就業規則の効力には影響がない」としています。 もっとも、当初からどのような意見が出ても考慮するつもりはないというのでは誠実に意見を聴いたとはいえない場合も考えられますが、原則的には上記の通達のように、労使の合意により締結される労働協約とは異なり、就業規則については使用者にその作成義務が課されているものであり、最終的には使用者の判断によってその内容が決定されるものです。このため、意見聴取の義務もその意見内容に拘束されるというものではありませんが、聞き捨てるということではなく十分検討の上、採れるものは採るという対応が求められます。それでもなお、採用することができない意見については、使用者はそれに拘束されることはありませんし、反対意見であっても意見書として添付して届け出ることには何の支障もありません。 11-3.就業規則と労働契約・労働協約の関係 労働条件については、就業規則の外にも労働契約で決める事項、労働協約に定めがある事項等根拠に違いのあるものがありますが、仮にこれらの定めの内容が矛盾していた場合は、どの定めが優先するのでしょうか。 就業規則と労働協約との効力関係については労基法第92条が、就業規則と労働契約との効力関係については同じく第93条が、そして労働協約と労働契約との効力関係については労働組合法第16条が、それぞれ定めています。 これらをまとめると、効力の優先順位は図式的には優位なものから順に、 ①強行法規 ②労働協約 ③就業規則 ④労働契約 という順になります。 国の定立した強行法規(労基法等)等には労働協約も就業規則も労働契約も反することはできません。 次に、使用者が一方的に制定改廃のできる就業規則や使用者と個々の弱い立場での労働者が結ぶ労働契約よりも、労働者の団結体である労働組合が使用者と結んだ労働協約が優先します。そして、個々の労働契約よりも使用者が労働者代表の意見を聴いて制定する就業規則が優先するということになるのです。ただし、より正確に述べれば、労働協約と就業規則、労働契約の関係については労働協約の定めた労働条件の基準に違反する限り、たとえ就業規則等の内容の方が労働者に有利であっても労働協約の効力が優先します(協約の趣旨がこれを上回る特別合意等を認める最低条件保障的なものであれば就業規則等の方が優先されます)。 これに対し、就業規則の場合は、就業規則の定める条件の基準に達しない(すなわちそれより低い)労働条件を定める労働契約を無効にするのみで、上回る個別の特約については無効としないという原則になっています。 11-4.就業規則の不利益変更と既存の労働契約 企業の人事諸制度変更に伴う労働条件の変更の場合、就業規則の改正により既存の労働条件を労働者に不利な形で変更することは原則として許されないという判例が確立しているそうですが、労働組合がない以上就業規則の変更という形でなければ統一的な労働条件管理は不可能であり、このような考え方は不合理ではないでしょうか。 就業規則の一方的な不利益変更と既存の労働契約の内容との関係について、最高裁判所は、次のような判断を示しています。 「新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないと解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない。」 「上記にいう当該規則条項が合理的なものであるとは、当該就業規則の作成又は変更が、その必要性及び内容の両面からみて、それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても、なお当該労使関係における当該条項の法的規範性を是認できるだけの合理性を有するものであることをいうと解される。特に、賃金、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については、当該条項が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容できるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずる。」 このように最高裁の判例は、労働条件の就業規則改正による一方的な不利益変更については厳しい条件を課しているのですが、上記に引用した判断でも明らかなように、その変更が合理的な内容のものであると認められる場合には、たとえ個々の労働者が反対したとしてもその適用は拒めないということになります。その場合の合理性についても上記の判断の示すように、変更されようとしている労働条件内容によっても要求される合理性の強弱にはニュアンスの違いがあります。賃金、退職金のような労働の対価の変更については特に強い合理的な理由が求められますし、同様に重要な労働時間等の基本的な労働条件の変更についても、これに準ずるような合理的必要性が求められるでしょう。 これに対し、福利厚生制度の変更等といった場合は要求される合理性にも自ずと差異があるものと思われます。設問の場合、具体的にどのような理由に基づき、どのような条件について、どのような変更を行うものか明らかでなく、具体的な判断はできませんが、上記の判例の一般的判断基準を参考として、変更の必要性とこれにより生じる不利益の程度等を慎重に判断の上、必要な代償措置や不利益緩和措置、経過措置等も併せて検討され、従業員の多数が納得できるような方策を講ずることが適当ではないかと思われます。 Contact 親切・丁寧に伺います。 043-272-3081 (9:00~17:00) 24時間受付 お問い合わせフォーム はぎの社会保険労務士法人・千葉事務管理協会facebookページ